2時間余りの幸福

わずか2時間で幸せな気持ちにしてくれる「映画」について。

映画『王様のためのホログラム』を観て(2月14日,2017年)

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画像引用元:王様のためのホログラム : 作品情報 - 映画.com

 

トム・ハンクス主演、トム・ティクヴァ監督最新作『王様のためのホログラム』を見てきた感想です。

ややネタバレしてます。

公式HP:

hologram-movie.jp

 

見たいと思った理由

トム・ハンクス主演

トム・ハンクス主演の人生ドラマということで食指が動きましてね。近作(『ブリッジ・オブ・スパイ』『ハドソン川の奇跡』)が立て続けに良い仕事をしてたし、世界三大トムの一角とあらばこれはもう見に行かなくてはなりませんよ。
(ちなみに三大トムは他にトム・クルーズ先輩がいて、残りは現状空席)

予告編が楽しげ

予告編の冒頭で画面のこちら側に語りかけてくる映像が楽しかったです。あと、「ナイスガイなトム・ハンクスが帰ってきた」っていう惹句も好みでした。

自分も中年の危機が怖い

やがてやってくるであろう中年の危機(Midlife crisis)という大人の悩みにどう向き合うかというようなテーマも惹かれましたね。

 

鑑賞した劇場

TOHOシネマズシャンテ

スクリーン1

平日の最終、19:45の回で鑑賞。

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客入り

封切りして間もないのと、TOHOシネマズデーで通常より安く見られるということもあってか平日にしてはなかなか入っていたような印象。中央の座席を中心に大体6〜7割程度の入りくらいだったような記憶。

年齢層は高め。作品の題材的にも中高年が多かったです。

 

あらすじ

立派な車もステキな家も美しい妻も、煙のように消えてしまった。すべてを失くした男の名はアラン。大手自転車メーカーの取締役だったが、業績悪化の責任を問われ解任されたのだ。愛する娘の養育費を払うためにIT業界に転職し、一発逆転をかけて地球の裏側、はるばるサウジアラビアの国王に最先端の映像装置〈3Dホログラム〉を売りに行く。ところが砂漠に到着すると、オフィスはただのボロテントでエアコンも壊れ、Wi-Fiもつながらなければランチを食べる店さえない。抗議したくても担当者はいつも不在(居留守かも?)、プレゼン相手の国王がいつ現れるのかもわからない。上司からはプレッシャーをかけられ、ついには体も悲鳴をあげる。追いつめられたアランを助けてくれたのは、予想もしない人物だった──。

 (引用:映画『王様のためのホログラム』オフィシャルサイト

予告編


『王様のためのホログラム』予告

 

今年の年明けにシャンテに行った時にこんなの配ってました。 

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感想

理想化されすぎた中年の危機に対する解決策が。。。

「疲れた中年が異国の文化と交わる中で自分の人生の目的を見つける話」というプロットは好きなんですけど、どうもその解決方法にノレなかったというのが正直なところです。

様々なものを失ったアランが嫌々来たサウジアラビアで何を得て、前向きな人生を取り戻したのかがよくわからなかったんですよ。

一瞬仕事がうまくいきかけて、最終的には頓挫するも、「俺たちやることやったぜ!」みたいになって良い話風になるんですけど、アランが何に奮起して行動を起こしたのかが読み取りにくいので、ただ思いつきで動いているだけのように見えてしまってあまり魅力的なキャラクターに映らない。

アランの悩みが中年の危機と言えるかは瑣末なことだったので置いておくとして、アラン自身の危機に対する解決策が、自助努力とか、それまでの凝り固まった考え方を変えるといった行動を介していないように見えてしまったので、「異国で美人な女性に恋したら何だか色々とうまくいくようになりました」というようにしか見えずモヤモヤしましたね。

そりゃ悩みに悩んで、異国に行って、美人(で高収入)な奥さん見つけたら中年の危機も吹っ飛ぶでしょうが、今作のテーマ的にそれは理想化されすぎてると思うんですよねー

異なる文化との交流っていう点では、ユセフっていう運転手が良い味出してるんですけど、彼も物語中盤でフェードアウトしてて勿体ない。本作で一番キャラが立ってて、異なる文化との橋渡し的なバランス感覚もある人物造形だと思うんですけどイマイチ何を言いたいかわからない政治的な問答がある中盤のシーンを最後に以降はほぼ出番なし。

バリバリのムスリムイスラムの信者)なのに、聖地メッカ(ムスリムしか入れない!)に非ムスリムのアランをムスリムのふりさせて通過しようとする感じの柔軟さとか面白かったのに。本当に勿体ない。

監督の過去作は好きだった

今回この記事書くために調べてて気がついたんですが、トム・ティクバ監督の過去作に『パフューム ある人殺しの真実』ってのがありまして、結構好きだったなーなんてのを思い出しました。なんで好きなのか全く覚えていないけれど。

本作にもちょろっと出てるベン・ウィショーが主演なんですね。今言われても全然わからなかった。

凄い雑にあらすじ説明すると、

ダークサイドに落ちた葉山アキラが変態性を開花させる愉快な冒険譚

だったように記憶してます。

葉山アキラがわからない方は食戟のソーマを読んでください。

 

映画の宣伝と興行についても考えて見た

話が脱線しつつ作品の感想としてはイマイチではあったものの、実は宣伝は成功してるんじゃないかと思ってたりもします。

「ナイスガイなトム・ハンクスが帰って来た」は正解

見たいと思った理由のところで書いた通りなんですが、「ナイスガイなトム・ハンクスが帰って来た」は正解だと思います。(キャラの実態が内容として正しいかは置いておきます。)

本編はイマイチだったにせよ、僕は予告編でこれを見て見にいきたくなってるわけで、ということは本編以上の魅力をこの予告編は伝えているわけですよ。その点で本作の予告編による宣伝は成功なのではないかと個人的には感じます。

宣伝と興行の難しさ

トム・ハンクスが主演の割に、公開館数が少なすぎないかと思ってたのですが、本編を見て納得しました。

これは宣伝が難しいからあまり客入りが期待できないという判断が働いたんだと思います。推しのポイントが掴みにくい。少なくとも僕にはあまり魅力的な作品(=宣伝しやすい作品)ではなかった。

それでも宣伝しなければお客は来ないし、しなければならないはず。

今回の宣伝担当チームは非常に頑張って、結果として本編の魅力以上を伝えることができた(ように思う、個人的に)。これは勝ちだと思うんです。

狭い公開規模は本作にあっているのか

そのあとに待っているのが興行、つまり劇場での公開なわけですが、ここで一つ疑念が浮かびます。上述した意味で宣伝するのが難しい作品の場合、公開規模を劇場数で少なくするのは果たして正解なのだろうか。

どんな映画でも一定数は「自分には合わなかった」というイマイチな感想があるとは思いますが、公開している劇場が少ないと、そういった感想の口コミが、見たいと思っている人に与える影響力が大きすぎるようにも思えるんですよ。

論理はこうです。

まず、あまり客入りを見込めないタイプの作品で公開している劇場が少ないと公開初週の週末とかで見ている人は全体数の上ではどうしたって少なくなります。

次に本編以上の魅力を伝えようと宣伝チームが頑張れば頑張るほど、作品の中身との乖離が大きくなることになります。

このようなタイプの作品では見た人の感想はあまり良くないことが多くなると思いますから、公開館数を少なく上映してしまうと公開初週に見た(それほど多くない)人からのイマイチな感想の口コミが広がってしまう。

そうすると、せっかく頑張った宣伝によって見たいなと興味を持ってくれた人が、それらの口コミを見て劇場に足を運ぶのをやめてしまう可能性があります。

じゃあどうすればいいか。

逆に広く浅く公開してみたら?

僕なりに考えてみたのは、トム・ハンクスという大きな名刺があるわけですから、大手シネコンで多くのスクリーンでかけてもらうこと。

作品規模的に無茶な感じもしますが、その代わりに上映期間は1週間限定にすることでなんとか交渉してもらう。

そうすれば、作品に興味を持ってる人は否が応でも公開初週に来なければ見られないわけで、マイナスな口コミが与える影響も最小限にとどめることができるのではないかと。

作品に対する満足度は変わらなくとも、興味がある層へのネガティブな影響は少なくなるような気がします。

(個人的には「~限定」という言葉に弱いのでさほど興味がなくてもホイホイ行ってしまう可能性もありますw)

どの層に見てもらえるのかを考える

興行としてやっている以上、お客さんがたくさん来てくれるに越したことはないわけですし、それが一種の成功の物差しにもなるんでしょうね。

そんな中で、今回の作品が興行として成功するかは、見たいと思ってくれる層をいかに取りこぼさないようにするかっていうのはやはり大事だったかと。

年齢とか男女とかアプローチは様々でしょうが、それ以前に普段映画をあまり見ない人を取り込める作品かどうかの見極めっていうのもあるなっていうのも感じているところで、普段見る人しか興味を示さなそうな作品であればやっぱり過不足なく供給できないと結果は辛いわけですよね。

 

余談として、そうじゃない作品について感じていることも書いておきます。

去年大ヒットした作品を3つ挙げるなら、間違いなく『君の名は』『シン・ゴジラ』『この世界の片隅に』 だと思います。

ヒットしているからには普段映画を見ない人も劇場に足を運んでいるわけで、その理由が気になる。これらの作品を取り巻いていた雰囲気というのが個人的には何か興味深くて、共通の要因となっているようにも思いました。 

「なんか凄い」

これが僕が感じた共通の雰囲気。

実際に会う人とかSNSとかでのこれら作品の話題になると「なんか凄いらしい」っていうのが多かった。

映画に限りませんが、「凄そう」なものは見てみたいというのは

やはり人情かねえ。(すずさん風に)

魅力のある作品に関しては、公開前後の宣伝でもこの「なんか凄いらしい」感の醸成がうまくいくと、ヒットに繋がるのかななんて風にも感じました。

 

最後に

これまで書いてきたことは全部、僕の実感です。(いわゆる一つの実感おじさんですね。)

データとかわかりませんので、違うことは教えていただけたらなと思います。

 

映画の感想を謳いながら全然映画の内容に触れていない記事となってしまいました。

映画の内容にきちんと触れている前回記事はこちらをどうぞ。

 

mariamucha.hatenablog.com